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現物は取引が少ないため、取引が多い金融派生商品の価格を参照するように求めた。
金融派生商品は投機的取引も多く、大幅な割引価格で取引されていた。
この時点ではAIGは優良会社とされ、損失を十分に吸収するだけの体力があると見られていた。
問題は、会計士が評価の仕方を変えただけで○億ドルも損失が出る元のCDSのポジションだった。
AIGFPは、CDOのプロテクションだけではなく、多くの銘柄のCDSを扱っていた。
AIGFPは拡大するCDS取引の胴元のような役割を果たし、CDSプロテクションの想定元本残高は、合計4000億ドルを超えていた。
CDSで最も活発に取引されていた銘柄が、ファニーメイとフレディマックである。
株式が上場された民間会社でありながら、政府の監督を受けている半官半民の機関だ。
債券に政府保証は付いていないが、市場は暗黙の政府保証が付いていると見ている。
あいまいな立場の機関がサブプライムローンの影響で破綻の危機にさらされたため、その債券のキャッシュフローを肩代わりするCDS取引が急増していた。
政府は○年7月にフアニーメイとフレディマックを支援する法律を作り、9月に公的管理下に置いた。
法律では、通常の債務については、公的管理はデフォルトにはあたらないと定めた。
ところがCDSについては定めがないため、業界で協議した。
管財人が指定されており、デフォルトの外形基準を満たしていることから、CDS取引では信用事由扱いを受ける。
CDS取引の最大の銘柄が、実質破綻した。
AIGFPがどれだけフアニーメイ、フレディマックのCDSプロテクションを売っていたかは定かではなかったが、市場では大きな損失を被っていると見られ、AIGの株式が売り込まれた。
そうした状況下で格付け会社のMが、AIGの格付け引き下げの検討を始めた。
格下げされた場合、信用保証力が落ちるため追加資金が必要になる。
AIGはFRBに400億ドルのつなぎ融資を求めた。
P財務長官は、保険会社は守らない考えを示していた。
ところがRが破綻した翌日の9月、FRBが財務省の支援のもとにAIGに850億ドルの融資を決めた。
政府はAIGの株式の9%を取得できる権利を確保し、事実上、AIGを公的管理下に置いた。
財務省はAIGの公的管理に関して、政府と納税者の利益を守るようにデザインされていると主張した。
ただP財務長官が実際に守ろうとしたのは、AIGからCDSプロテクションを買っていた金融機関だった。
AIGが破綻すれば、AIGが売ったCDSプロテクションの効果はなくなる。
そうするとCDSプロテクションで損失を回避しようとしていた金融機関が損失回避できなくなり、連鎖破綻が起きかねなかった。
したがって、CDSを介した金融システミックリスクの拡大を防ぐ必要が生じた。
後に政府に救済されたAIGが、CDSの契約を履行する形で取引相手に支払った額が明らかになる。
最も多いのはP財務長官の出身母体であるG・S向けで、その額は129億ドルにものぼった。
次いでD銀行、S・J、B、M、B・O・A、UBS、BNP、HSBCなどと続く。
ドイツとソシエテに支払われた額も、100億ドルを超えている。
AIG支援は、そうしたウォール街の大手金融機関を助けるために実施された。
金融機関は、CDSで信用リスクを回避できると豪語して取引をしていた。
しかしその胴元が破綻の危機にさらされ、最先端ともてはやされたリスク回避の仕組みが虚構にすぎないことが明らかになった。
ところが、それを放置すると金融機能全体が麻療するため、政府が胴元を税金で救った。
傷口は着実に広がっていった。
AIGは、719月期決算で最終赤字が240億ドルまで拡大した。
これを受けて政府とFRBはAIG支援を拡大する。
融資額を増額すると共に、およそ400億ドルの公的資金で優先株を買う形で資本注入した。
3月には400億ドルの優先株を普通株に近い株式に転換し、加えて300億ドルの優先株購入による追加の公的資金が投入できるようにした。
その過程でAIGは、巨額の政府支援を受けながら幹部に100万ドルを超えるボーナスを支払っていることが明らかになった。
政府が支援しなければ破綻しボーナスどころではないが、大きすぎて潰せないのをいいことに政府からの支援金をボーナス支払いに回していた。
公的資金の原資を拠出している米国民はAIGの社員、役員にばかにされた格好で、政府によるAIG支援への批判が強まっている。
このため損失が3次にわたる政府救済で終わる保証はない。
今後、追加支援が必要になる可能性が大きいが、が巨額報酬をもらったまま、納税者資金による救済を続けるのは難しい。
まずAIGのCDSに関する取引を徹底調査して、AIGの利益を損ねる行為に手を染めた役職員を背任で逮捕するような、規律を伴う当局の行動が欠かせない。
そのうえで再発防止に向けたCDSへの厳しい規制が必要になる。
CDSは1990年代半ば、JPMのPが開発した。
基本的な仕組みは、特定の会社の発行した社債などの信用リスクを取引する店頭での契約である。
例えばA社が発行した社債がデフォルトを起こしたとき、その元本の支払いを肩代わりする。
元本の肩代わりをするのは、主に金融機関でプロテクション(肩代わり契約)の売り手と呼ばれる。
一方、元本の肩代わりを受けるのは、A社の社債を保有する投資家や金融機関でプロテクションの買い手となる。
この取引では、社債の発行者であるAはプロテクションの売り買いに直接は関与しない。
投資家から見ると、保有する社債のプロテクションを購入すると、社債の発行者が破綻してもその社債の元本が確保できる。
プロテクションの購入料を払うことで、保有資産に保険をかけるような効果が期待できる。
これは、金融機関にとって画期的なものだった。
それまで金融機関は、先物やオプションによって為替や金利の価格変動リスクを回避することができた。
しかし融資や債券保有など信用リスクに関しては、リスク回避手段がなかった。
そのため金融機関は自らが抱える信用リスクをモニターし、質が悪化し始めればそれを売却するしかなかった。
質の悪化がつかめなければ、不良資産となり金融機関の経営を圧迫した。
ところがCDSの登場で、金融機関は信用リスクについてもリスク回避手段を手にした。
日本のように、融資の売却に融資対象の企業が不快感を抱くような国では、融資対象企業に全く知られることなく、そのリスクを回避できるようになった。
一方、CDSのプロテクションの売り手は売却収入が得られる。
損失を肩代わりする契約を売って5年間破綻がなければ、売却益はそのまま利益になる。
これは保険を売るのに似ており、AIGなどがプロテクションの売り手に回った。
2002年ごろから、CDS市場にHが参入し、市場が変質する。
Hは、損失を肩代わりしてもらう社債などを保有していないにもかかわらず、プロテクションを売買した。
プロテクションの価格変動(スプレッドで表される)で儲けようとしたのだ。
これによってCDSの取引は急速に膨らんだが、リスク回避という本来の目的から離れた投機市場へと変わっていった。
この変化は、取引されるCDSを見ても確認できる。
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